聴覚テスト
1、聴覚テスト 基礎編
音楽や音響の世界で仕事をしたい、と考えているみなさんにとって、自分の耳の能力はどんなものなのか、興味があることと思います。もちろん、ここでいう耳の能力とは、医学的な「聴力」のことではなく、もっと音楽的な聴こえの感覚「聴覚」のことです。音の高低の微妙な違い、テンポの遅速の微妙な違いはもちろんのこと、音質が良いとか、音色が硬いとか、ノイズが乗っているとか、位相がずれているとか、リズムがモタッテいるとか、チューニングが甘いとか…そういうことが自信をもって判定できる、聴覚的な能力のことです。
例えば、リズム、テンポ、ビートに対する能力は、先天的、民族的な要素によって、また、音感や和音の感性は幼少期の訓練によって、さらに、音質や音色評価は音楽的経験の質によって、それぞれ左右されますが、たいていの場合、鍛えて耳を良くすることはできます。
音楽や音響の技術的なことは、後からでも努力や経験によって習得できるでしょう。しかし、耳の能力、つまり聴覚は、少しでも早く若いうちに、耳が柔軟なうちに鍛えておかないと手遅れになります。残念ながら、音楽を仕事にするのに向かない耳というのもあります。みなさんがそうでないことを祈りつつ、聴覚テストを実施します。
聴覚テストを受けて、その結果を参考に聴覚の弱点を克服してもらい、ますます「良い耳」を持ってもらいたいと願っています。
※ ミュージック アコースティックス 045(p.86~)に、A「音の高さテスト」、B「テンポ変動テスト」についての詳しいデータがあります。また、耳を鍛える(耳を良くする)には様々な方法がありますが、同じく096(p.186~)に耳を鍛える方法が述べられています。参考にしてください。
テスト内容
次のような内容のテストを行います。
A 音の高さテスト
3秒程度の正弦波(約440Hz)の音が2回出ます。1回目の音に対して2回目の音が、高いか低いか、または同じかを、聴き分けてください。とても微妙です。
B テンポ変動テスト
8ビートのリズムパターンが8小節でます。前半の4小節はM.M.=120 で一定のテンポですが、後半の4小節は前半に比べて、テンポが速くなる場合と、遅くなる場合と、まったく変わらない場合があります。それを聴き分けてください。微妙です。
C 音の大きさテスト
いろいろな楽器音やリズムパターンがでます。音が途中で音が大きくなる場合と、小さくなる場合がありますので、それを聴き分けてください。変化するタイミングは合図します。
D 周波数成分テスト
音楽が約1分出ます。前半は、フラットな特性で出ますが、後半は、特性(周波数成分)が変化します。どう変化したかを聴き分けて下さい。また、変化するタイミングは合図します。
E 音響知識テスト
実験問題と知識問題があります。楽器音響についての出題がメインです。テスト内容は、今は秘密です^^;^^;
F 楽器編成テスト
これから聴く音楽が、どんな楽器で編成されているかを聴き分けてください。解答欄のカッコ内に書いてあるヒント = 打楽器、ベース類、鍵盤楽器、ギター類、管楽器、弦楽器 を次の中から選んで記入してください。ただし、出てこないものや、2回以上出てくるものもあります。
テスト対策
せっかくテストを受けるなら、良い成績を取りたい! と思うあなたに向けて、テスト対策法を伝授しましょう。
B テンポ変動テストの対策・・・テンポ感はリズム感とはちょっと違います。いわゆる「のり」が良いかどうかではなく、テンポキープの安定感です。この機会に、ぜひ、自分用のメトロノームを1台持ちましょう。そしてMM=60、MM=120といった基本的なスピードを覚え、それをキープできるようにしましょう。
例えば、はじめの8小節はメトロノームに合わせてテンポを刻む→メトロノームを止めて8〜16小節、自分でテンポを刻む→また、メトロノームをスタートさせて、自分のテンポがはじめのテンポをキープできていたか確かめる。うまくいくようになったら、自分で刻む小節をひたすら長くしていく。
D 周波数成分テストの対策・・・音楽を聴きながら、EQをいじってみましょう。高音を上げる、高音を下げる、低音を上げる、低音を下げる...いろいろやりながら、どう音のバランスが変わったかを聴き比べて見ましょう。音楽全体の印象だけでなく、高音ならハイハット・シンバルの聴こえ方、低音ならキックやベースの聴こえ方がどう変わるか、と言ったように、楽器を絞って聴き比べると分かりやすいですよ。
F 楽器編成テストの対策・・・今回のテストに出題される楽器は、基本的なものばかりです。とはいえ、例えばヴァイオリンとビオラの聴き分け、チェロとコンバスの聴き分けなどは、なかなか難しいものがあります。また、意外と分かりにくいのが、エレキベースとウッドベースの聴き分け、生ピアノとエレキピアノ(ローズなど)の聴き分けです。音作りによっては、生ギターとエレキギターも、同様に、聴き分けにくい場合があります。このあたりが、しっかりと聴き取れるように、日頃の音楽鑑賞の場で、自分の耳をしっかりと鍛えておきましょう。
楽器については、 >>Web楽器辞典 >>私家版楽器辞典 のようなサイトもあります。
2、聴覚テスト 音楽編
音楽はその名のとおり「音を楽しむ」ものですが、それを仕事にしたりすると音楽が「音が苦」になってしまうこともあります。また、自分が好きな音楽とお金になる音楽(仕事になる音楽)は違ったりもします。なかなか厳しい現実です。それでも皆さんには、もっと耳を鍛えてもらって、より良い音を、より良い音楽を世の中に提供できる優れたエンジニアに、プロデューサーに、ジャーナリストに、そしてミュージシャンになってもらいたいと思います。
音楽の中には実に多くの情報が含まれています。ボーっと聴いていると、この曲はいいとか悪いとか、その程度で終わってしまいますが、それでは困ります。
このバンドの楽器編成は? キーは? コード進行は? 拍子は? ビートは? テンポは? コーラスの人数は? 1コーラスは何小節? ……こんなことも必要に応じて聴き取れなくてはいないのです。
こんなことが苦痛にならないように、日ごろから耳を鍛えることが大切です。
前回同様、今回の聴覚テストでもその結果を参考に、聴覚の弱点を克服してもらい、ますます「よい耳」を持ってもらおうというのが、もちろん、その目的です。
※ ミュージックアコースティックス 096(p.186)で、聴覚を鍛える方法について述べていますので、ぜひ参考にしてください。
ミュージックアコースティックス 027(p.56)に、ビートについての解説があります。このページ下部にあるビート説明と合わせて活用してください。
聴音については、下記のような支援サイト(無料サイト)もあります。
senzoku online school of music
テスト内容
次のような内容のテストを行います。
A 聴音(相対音感による)
楽器で ドレミファソラシド と、音を出してから、ある音を出します。
ある音の音名(⑩は階名)を答えて下さい。また、ボーナスで、絶対音感問題もあります。
B リズム形態テスト(ビート・拍子感覚)
これから聴く音楽の、リズム形態(ビートや拍子)を、下記の選択肢から選んで答えて下さい。なお、ビートについての説明は別にします。
8ビートrock系 ・ 8ビートR&B系 ・ 16ビート ・ 4ビート ・ 3/4拍子 ・ 5/4拍子
C 複合問題(旋律・和音・リズム)
【旋律聴音】
ピアノで、順に5つの音を出します。はじめの音は必ず「ド」です。それに続く4つの音の音名を答えて下さい。なお、使う音は ドレミファソ の5音のみです。
【和音聴き取り】
ピアノで ドレミファソラシド と、音を出した後で、3和音を弾きます。この和音の構成音を選択肢から選んでください。
【リズム聴音】
スネアドラムで、2小節分(4/4拍子として)の、あるリズムを出します。そのリズムの元となっているパターンを、下記から選択して答えてください。
D 楽器音の判別
ある楽器の音を単音で出します。何の楽器かを、下記から選んで記号で答えてください。
E 音響知識テスト
実験問題と知識問題があります。楽器音響と音楽学についての出題がメインです。テスト内容は、今は秘密です^^;^^;
リズムとビート 解説
拍子
音楽のリズム形態を表す言葉に「拍子」というものがあります。4/4とか6/8とか3/4など、楽譜の頭に書いてあるあれです。3/4拍子なら、この音楽は4分音符を基本にリズムができていて、その4分音符3拍で1小節になっている、という意味です。つまり、1小節がどう構成されているか、ということです。
クラシック音楽には4/4、4/8、3/4、6/8など、実に多彩な拍子がありますが、実は、ポピュラー系の音楽は、ジャズも含めてほとんどが4/4拍子です。しかし、ポピュラー系の音楽には、クラシック以上に多彩なリズム表現があります。同じ4/4拍子でも、リズムの刻みかたやアクセント、ビートのタイミングの複雑な組み合わせで、多彩なリズムを表現しているのです。それが、8ビート、4ビート、16ビートなどと表現される、いわゆる「ビート」です。
8ビート
4/4拍子なので、メロディーなどは4分音符を基本にできていますが、ドラムのHHやパーカッションが1小節を8拍(8分音符)で刻むので、8ビートといいます。通常、1小節8拍のうち、3,7拍目にアクセントが入ります。また、8ビート特有の「ビート感」は、ベースやキックで表現しますが、ロックは1,5,6拍目にビート感があり、R&Bは1,4,5拍目(特に4拍目が重要!)にビート感があるものが多いです。(例外もたくさんあります)
ノリやすく演奏しやすいので、8ビートの音楽はとても多く、世界的に見ても、ポピュラー系の過半数を占めます。(邦楽は、もう、ほとんど全部8ビート、といってもいいほどです)
4ビート
4/4拍子の典型的なリズムパターンで、ジャズ特有のリズム表現です。たいていは、ベースが4分音符を連続させるベースランニングという奏法で、このビートは表現されます。
1小節4拍のうち、アクセント及びビート感は、2,4拍目に入ります。HHで2,4拍目のアクセントを強調します。1,3拍目は、音こそ出しますが、感覚的には休符に近く、決してアクセントやビートをのせてはいけません。
また、シンコペーションを多用して、小節の最後の音符が、次の小節の頭の音符と結ばれることで、「アフタービート」を強調します。
伝統的に小節のアタマにアクセントやビートをのせるのが得意な日本人には、このリズムはとても苦手です。
16ビート
4/4拍子なので、メロディーなどは4分音符を基本にできていますが、ドラムのHHやパーカッションが1小節を16拍(16分音符)で刻むので、16ビートといいます。通常、1小節16拍のうち、5,13拍目にアクセントが入ります。また、16ビート特有の「ビート感」は、ベースやキックで表現しますが、たとえば、1,8,9拍目にビート感がのります。(この場合、特に8拍目が大切!) 重要なのは、2,4,6,8、10、12、14、16拍目のどこかにのるビートです。この位置は、8ビートの刻みにはない、16ビートだからこその位置です。ここにビートがのって、初めて16ビートになるのです。16ビートは、ちょっと細かいけど、スピード感とスリルがあるので、ダンス系や技巧的な曲に多いリズムです。
ほかに2ビート、24ビート、32ビートなどもありますが、今回は省略します。